伝統工芸のイメージとは一線を画す洗練された雰囲気が漂うのは、
ものづくりの街・静岡が有する日本最大級の伝統工芸体験施設「駿府の工房 匠宿」。
2021年のリニューアル以降、「匠宿」の広報・松本宏予さんに、
「匠宿」のこれまで、いま、そしてこれからについて教えていただきました。
―「匠宿」ではどういった伝統工芸が体験できるのでしょうか。
静岡が誇る伝統工芸の体験を多く取り揃えています。
駿河竹千筋細工や染め物、釘を使わず組み立てる木工指物、漆や陶芸などですね。
体験だけでなく、伝統工芸が職人から直接学べる教室も展開していて。
職人の技術に直接触れられる、貴重な機会なんじゃないかなと思います。
―体験できる作品がモダンだったり、3つある工房の工房長も若手だったりと、伝統工芸が少し身近に感じられる気がします。
若手の職人が伝統工芸を教えることで、若いファミリー層の方にもより親近感といいますか、
伝統工芸へのハードルが下がる気がしています。
人気テキスタイルブランド ”ミナ ペルホネン” との染めのコラボも、様々な層の方に喜んで頂いています。
作品の内容は、季節の行事に添ったものも含め、職人や各工房のスタッフから
どんどん新しいアイデアが上がってきます。一度来られた方が
何度でも楽しんでいただけることを念頭に置いて、
毎月何かしら目新しい体験ができるようにしています。
―2021年のリニューアルで、伝統工芸の技を用いた内装となっているんですね。
カフェの照明やのれんなどの設えにも工芸品を使用しているので、
随所に匠の技を感じていただけるのではないかと思います。
施設周辺は三方山に囲まれ、古き良き景観が残っているのですが、
その街並みにも溶け込むような建築になっていて。
現状維持ではなく良いものをどんどん取り入れていく。
だからいつもどこかしらが工事中だったりするのですが、
常に変化を続けているのでお客さまもスタッフも
飽きないのではないかと思いますね(笑)。
―施設内に静岡醸造の醸造所があるんですね! とても面白いと感じました。
静岡はクラフトビールの醸造所が多いことでも知られていますが、この丸子地区には醸造所がない。
そこで静岡醸造さんを誘致して、敷地内に醸造所を構えていただきました。
この4月にオープンしたカフェ「The COFFEE ROASTER」では、
できたての生ビールも飲むことができますよ。
―またひとつ、魅力が追加されたわけですね!
工芸品に触れるのと同時に、食を楽しめる施設でもあるんです。
いま敷地内にあるのは、静岡醸造の醸造所に、
地元で採れるハチミツや食材を使ったカフェ「HACHI & MITSU」、
あらたに加わったコーヒーの焙煎士がいるカフェ「The COFFEE ROASTER」に、
地元で愛されてきた名店『吾作』の味を継承したきんつば屋「蓬きんつば ときや」。
伝統工芸とあわせて、食の分野のものづくりについても意識しているんですよね。
ここ「匠宿」には「食の匠」もいる、と。
実際、「HACHI & MITSU」のモーニングやランチを
楽しむ目的で来てくださる地元の方も多くて!
今後フードメニューがパワーアップしていきますので、ぜひこちらも楽しみにしていただきたいですね。
―伝統工芸の体験だけでなく、世代や性別を問わずいろんな楽しみ方ができるわけですね。
「匠宿」は、いつ来ても誰と来ても必ずハマるものがある。
天候に左右されず、一日中いろんな過ごし方ができる。そんな場所なんです。
さらに施設周辺の泉ヶ谷地区は、小さな宿場町だった丸子宿の中でも、
歴史を感じる史跡や古民家とモダンなお店が同居する里山地区。
「匠宿」での伝統工芸体験を2~3つ組み合わせてどっぷり体験したあとは、
たっぷり美味しいものを食べ、ゆったり街歩きをして泉ヶ谷地区を満喫していただくのがおすすめです!
―今後の展開については?
”日本最大級”から、”日本一の”体験施設へ。体験のクオリティはもちろん、
センスや接客の良さなどすべてにおいて、これは関わるスタッフ全員が本気で目指しています。
そして“泉ヶ谷”という名前を聞いた人全員が、あの素敵な里山ね、
歴史に触れたり伝統工芸に触れたりできるところだよね、ってピンとくるような、
街全体、施設全体でそんな場所になっていくといいですね。
ライター:左藤緋美