【事業者紹介】「静岡おでん ガッツ」にあるのはリアルな静岡。目指すは“静岡のテーマパーク”

かつては駄菓子屋でも売られていた静岡のソウルフード“静岡おでん”。
ほか数々の静岡グルメを提供するのは、東京・高田馬場にある「静岡おでん ガッツ」。
静岡での食べ方を再現したいと語る静岡出身の店主・市川徳二さんに、
お店のこと、そして静岡に対する並々ならぬ想いを伺います。

―「静岡おでん ガッツ」のこだわりをぜひ教えてください。
なるべく静岡で作られたものや静岡産の原材料、調味料を使うことですね。
あとは、静岡の人たちが食べているような食べ方や調味料の使い方、調理の仕方を再現すること。
極端なことを言うと、料理の質とか美味しさ、値段っていうよりも、
どれだけ静岡の日常に近いものを提供できるかということを目指しています。
たとえば…はんぺんフライは、もしかしたらマヨネーズやお醤油で食べたほうが美味しいかもしれない、
でも自分が子どものころは中濃ソースで食べるのが絶対で、自分の中でそれが慣れ親しんだ味。
美味しいよりも、あえて昔ながらの静岡県人の食べ方で食す。
そういうところにはこだわりたいと思っています。

―なぜ静岡おでんのお店を開店しようと?
私の実家は酒屋をやりながら軒先で酒やつまみを提供する、いわゆる角打ちのような店をやっていました。
父の作ったおでんをお客様に提供していて、私も小さい頃からそれを食べてという環境で育ちました。
東京の大学に進学、就職した中で気付いたのは、父への想いと静岡に対する想い。こと静岡に対する想いは
他者より秀でているんじゃないかと。その想いを形にすべく、2012年に開店しました。

―お父様が30年以上作られてきた「正統派ストロングスタイルの静岡おでん」とは?
静岡おでんにはいろいろな定義があって。たとえば黒はんぺんがあるとか、
青のり・だし粉をかけて食べるとか、串に刺してあるとか。それをきちんと踏襲しているってことですね。
利益を追究すれば、どうしても食材や調理法、提供方法を変えたりすることが出てくるのですが、
うちは改変せず、本当の静岡のおでん屋さんで出しているようなおでん。
それに限りなく近いものを提供したいと。

―意識されているのは「ザ・静岡」の味や体験ということでしょうか。
目指したいのは、ただの飲食店というより、もう少しエンターテインメント性の高いところ。
目標としてはディズニーランドみたいな、「静岡」っていうテーマパークに来たような
フワフワした気持ちになれるといいかなと思って。
気軽に来て、静岡の空気感を感じていただければ、それでいいと。
あんまり大それた期待をもってうちの店に来ていただくよりも、
たまたまフラッと入って2、3杯飲んで1000円、2000円使って楽しく過ごしてもらえら、
それがこの店の役割だなと思うんですよ。

―市川さんの静岡に対する想いを強く感じます。
やはり静岡のためになるようなことをしたいですよね。
うちは静岡ありきの店で、静岡からいろいろなものをいただいている。
その分きちんと恩返しをしない限りは、当店の発展はないと思いますから。
感謝の気持ちを、静岡の未来のために何か尽力することで示せたらと。
静岡の美味しいもの、温かい文化に観光地。そういう良さを東京で発信して、静岡に関心を向けていただいて、
そこから実際に静岡に出かけ、さらには「ここに住んでみたい」と思っていただけるような…。
そういう演出ができたらなとは思いますね。

―やはりお客様とも静岡の話題になることが多いとか。
おすすめの旅程や食べ物の話だけじゃなく、静岡で暮らしてみたいっていう話になることもあるんです。
地元は静岡ではないけれど、将来的には静岡に移住して清水エスパルスを
もっと応援したいんだっていう方、実は結構いらっしゃるんですよね。

―そこまで熱心なサポーターさんが多いんですね! 驚きました。
静岡は気候的にも温暖で、静岡市の中部地区は雪も降らない。
大都市圏からほどよい位置にあるということもあって過ごしやすい。
海があって山があって、美味しいものがたくさんあって。
そんなに刺激的なものはないかもしれませんが、毎日を心穏やかに過ごすのに
一番適している場所だなと思うんですよね。
温泉もあるから、静岡という場所がものすごく極楽の場所になっていくんじゃないかなって思います。

―刺激が欲しいときは大都市圏に行けばいいわけで、そう考えると静岡は非常に暮らしやすい場所だと。
そう。ありきたりの表現しかできないんですが、とにかく暮らしやすい。
それがすべてなんですよね。良いところだから絶対に気に入りますよ、と。
それは私の中で絶対的すぎて揺るがない。
もしかしたら仕事をするという点ではまだ難しいかもしれませんが、
人として生活するということにおいては、多分日本の中でも一番良い場所なんじゃないかな。

ライター:左藤緋美