【お店】変わった立場と続く夢。体に優しいお茶を静岡から全国へ。(CHA10)

だれかに紹介したいお店…それは提供される商品の質はもちろん、中で関わっている“人”に魅力があるのではないか。そんな想いからこのシリーズではお店の中の人にフォーカスしつつ、お店を紹介していきます。

急展開の静岡移住

2017年11月、新静岡駅近くの閑静な住宅街にオープンした『CHA10(チャトウ)』。体に優しい新感覚のお茶とスイーツを楽しめるカフェとして、国内外のお客様でにぎわっています。キラキラと輝く明るい笑顔で接客する中野目則子さんは、東京から移住して、この店をひとりで経営・運営されています。大きな夢に向かって一歩ずつ前進する中野目さんのストーリーと合わせてお店を紹介していきます。

――スタイリッシュなカフェですね。

ありがとうございます。こちらはもともと静岡のカクニ茶藤という日本茶の製造や輸出を行う会社が、2017年11月にオープンした抹茶カフェです。カクニ茶藤の代表でもありグローバルに活躍される実業家・加藤さんの「ぜひ鷹匠で若い世代にお抹茶を伝えるカフェをオープンしたい」という思いから始まりました。

――では、中野目さんはその会社で働かれていたのでしょうか?

それが全く違うんですよ。このカフェを引き継ぐため、今年(2019年)6月に東京から静岡に移住してきたんです。

――そうだったんですね! それまでは別のお仕事をされていたんですね?

話せば長くなりますが(笑)、私は東京出身で、NECで会社員をしていました。その後、飲食業に興味を持ち、27歳でドトールコーヒーに転職して店長に。長く飲食業をしていると体が疲れるので、体のひずみ矯正や小顔セラピーなど美容系の資格を取るうち、食自体にも関心が向いてマクロビォティックを知りました。これなら体が続く限り飲食業ができると思い、東京・日比谷にあるカフェ『CHAYAマクロビカフェ』に電話して、スタッフを募集してないですかと聞き、採用してもらいました。これが14年前のことです。そこから横浜店、二子玉川店、日比谷店の店長を経験してきました。

――20代から長くドトールで働かれて、それからマクロビカフェで14年…そこから静岡という新天地でお店をはじめられたきっかけは何だったのでしょう?

『CHAYAマクロビカフェ』で日本のスーパーフードを扱い出して、そしてお抹茶に出会いました。マクロビもお抹茶も日本古来のものなのに、海外に出てから認められて、逆輸入してヒットしたんですよね。マクロビは丸ごととるのがコンセプトで、オーガニックにこだわったりと共通点が多いんです。
2年前の夏、ちょうど東京のCHAYAがお店のリニューアルで3か月休むとき、両社をつなぐ方から「カクニ茶藤さんが静岡でカフェをオープンするので、社長を紹介したい」と言われて、加藤さんに初めてお会いしました。「ここでお茶屋さんをやるんだけど、どうだろう?」と聞かれて、「ここでお茶だけで戦うのはかなり難しいのでは」と感想をお伝えしたことを覚えています。

――なるほど、カフェのプロとして意見を求められたのですね。

それから11月にオープンされて、飲食経験のない社員さんがされていたので、私はプライベートで遊びに行って、少しだけアドバイスみたいなことをしていました。社員さんは私がアドバイスしたことをちゃんとやってくれて、すごいなあと思っていました。
それが今年の初めに、カクニ茶藤さんの本業が忙しくてカフェをできないので、手放して誰かに譲りたいと話をされまして。実はオープンのときにも「やりませんか?」と声をかけられたけれど、私は東京人で東京に仕事があって、静岡は誰も知らないから難しいとお断りした経緯があったんです。でも再度「好きなようにやっていいから、継いでくれたらうれしい」と真剣にお誘いを受け、今年2月に「わかりました」とお引き受けすることにしました。そして、東京と静岡を行ったり来たりして5月に前の会社を退職し、6月に静岡へ移住してきて、6月26日にこちらをリニューアルオープンしました。

――まさかの急展開ですね。リニューアルで何か変えられたのですか?

店名と内装はそのまま、さらに私が今までやってきたマクロビを活かして、「体に優しいお茶とスイーツで、訪れるたびにアンチエイジングされてしまうカフェ」というコンセプトを掲げました。新しい感覚で、体に優しいお茶とスイーツを提案しています。

覚悟を決めて夢の続きへ

――お店をリニューアルオープンされて半年、いかがですか?

今はひとりでやっていて、お店は9時から17時まで開けています。東京では夜まで仕事をしていたけど、今は昼に働き、人としていいサイクルだなと。もともと11時から19時までだったのを2時間早めて、夜は他の方に貸してバーとして活用されているんですよ。
思っていたよりお客様がたくさん来てくださって、週末はいっぱいになるくらい。気軽な英会話の会なんかもやっています。でも、思っていた以上に大変かな(笑)。ドリンクとスイーツだけで店を経営していくこともですし、ひとりでやっていくことも難しくて、そろそろ人を入れたいなと。

――人気店に成長して、お一人で回すのは大変そうですね。どんなお客様が多いですか?

若い方をはじめ、食にこだわりのあるご家族、外国の方が多いですね。インスタを見て来てくれたアジアや欧米の方も。新しい感覚のお茶を求めて来てくださっているみたい。そんな方には、近くにある『chagama(チャガマ)』さんをご紹介するんですよ、素敵なお茶屋さんだから。静岡のお茶屋さんって、ライバルより共存という感じで、みんなで静岡のお茶をアピールしていきたいねというところがよくって、でも奥ゆかしくてアピールし切れていないのがもったいないとも感じます。

――東京から移住されて暮らしの面ではいかがでしょうか?

実はこの歳でシェアハウスに住んでいます。若い人が多いカフェだから、まずはシェアハウスに住んで静岡のいろいろな人とつながり意見を聞けたらなと思いまして。

――そうなんですね。シェアハウスだといろいろな情報が入ってきやすそうですね。住んでみて間もないかと思いますが、静岡にはどんな印象をお持ちですか?

下田の温泉にはたまに来ていたけど、まさか静岡に住むことになるなんて。住んでみたら、おいしいものも海も温泉も何でもそろっていて、とても好きになりましたね。東京は3倍速で、ときどき行くとエキサイティングでワクワクするけど、こっちにいると落ち着きます。あと静岡の人は穏やかで優しいなと感じます。

――ちなみに、中野目さんはカクニ茶藤の社員として転職されてカフェを運営されているされているのですか?

いえ、もう経営権をいただいて、オーナーという形です。皆さんに応援していただきながら。

――では本当に覚悟を決めてやられているという感じですね。

そうですね。毎日が充実していて、お客様に支えられているなと日々実感しています。へこみそうになっても、お客様が「静岡に来てくれてありがとう」「こんなカフェは今までなかったので本当にうれしい」と言ってくださって、私のやっていることは意味があるんだとすごく励みになります。

――素敵ですねー。今後の構想を聞かせてください。

まずはマクロビのランチを11月中に始めて、物販を今の倍くらいに増やし、静岡のお茶を広くアピールするために通販もやっていきたいと思っています。豆乳ラテのスティックも作ってみたいです。
大きな夢としては、もともと前のCHAYAにいた新人の頃から、体に優しいレストランを全国展開したいという思いがあり、CHAYAは卒業したけれど、ここでも夢が続いている感じです。私、中学ぐらいから健康オタクで、CHAYAに出会ったとき、こういうお店を広めていきたいと思ったんですよね。会社で社長と夢を語る機会にも「全国展開したい」と言い続けてきて、もう14年。だから、静岡で自分のお店を持つことができて幸せなんですよ。静岡の方は財布のひもが固いらしく、静岡でうまくいけば全国どこでも成功する、お店を6か月続けられたら認められた証拠と言われていて、もうすぐ6か月経ちます。これからも夢に向かって一歩ずつ進んでいきます。

急な展開でお店を運営することになった中野目さんですが、その決断の奥には意図せず昔の夢に通じていくものがあったのではないかと思います。まずは静岡の地で地固めをしつつ、全国展開されて日を楽しみにしていたいと思います。
(文=佐々木恵美、写真=窪田司)

【CHA10】
https://cha10.jp/
静岡県静岡市葵区鷹匠1-11-6
TEL:054-204-2210
営業時間:9時〜17時
定休日:火曜日