「川根茶」は静岡が生んだ日本三大銘茶のひとつ。
この販売促進のため、静岡県中部の山間に位置する川根町と川根本町エリアで
生まれたのが「川根お茶街道推進協議会」です。当協議会で川根茶の普及に努める花房則告さんに、
川根茶、そして川根茶を生み出した山里、川根本町の魅力についてお聞きしました。
―「川根お茶街道推進協議会」の活動について教えてください。
「川根茶を広めたい」という共通の想いを胸に、役場や農協、観光協会や各市町の商工会など
計12の団体が参加し、川根茶の販売促進のために活動しています。
具体的には、毎年11月23日に開催されているイベント「川根時間」への参加。
これは川根の紅葉、自然とともに、町の施設で川根茶をゆっくり楽しんでいただくもので、
お茶の手揉み体験や品評会の上位入賞茶体験などもできる体験イベントになっています。
町で採れた最初のお茶を奉納し、お茶の安全祈願をする「献茶式」や「新茶の初取引」にも参加したり、
「川根茶の日」と制定されている4月21日を中心にイベントを開催していくなど、
川根茶の普及に日々努めています。
―後継者や若い世代に向けてのアプローチもなさっていますね。
お茶に関する勉強の場「川根茶塾」を実施して、
茶商の若い後継者の方を集めて経営の仕方を勉強していただいたり、お茶を使った料理の試作をし、
実際に町の方に食べていただいたり。また、小さい頃から川根茶に慣れ親しんでもらいたいと、
茶業青年団が「お茶の入れ方教室」を各市町の小中学校で開催しています。
ここ最近は関東方面に出向き、実際に川根茶を飲んでいただく機会をつくる活動へとシフトしていますね。
―川根茶の魅力とは、どういった点にあるのでしょうか。
お茶には「深蒸し茶」「浅蒸し茶」があって、川根茶は主に、
茶葉のリーフの形状がしっかりした「浅蒸し茶」が中心なんですね。
全国茶品評会で昨年度も農林水産大臣賞を受賞したり、出品された方がすべて3位以内に入賞したりと、
高品質な点が川根茶の特徴かつ魅力だと思います。
川根茶は山間部で採れるので、他の産地より採れる量が少なくなってしまう。
であれば「量より質」で勝負しようと、品質に力を入れているというわけです。
―川根茶を初めて飲まれた方から、どういった感想を聞くことが多いでしょうか?
浅蒸しの、濃緑の針のような茶葉を見て、「わぁ…!」と驚かれる方が多いですね。
飲んでいただくと「深蒸しよりも渋味が感じられる」というお声が聞かれます。
川根茶には、嫌味のない渋味があるのが特徴。
渋味もあんまり強いと嫌われてしまいますが、それぞれの茶商独自の仕上げ方によって、
いい塩梅の渋味が感じられるんですよ。
浅蒸し茶はお茶の色としてはかなり薄いものの、味は濃く強く感じられる。
若い方にぜひ川根茶のコクを知っていただけたらと思いますね。
―浅蒸し茶、ぜひ飲んでみたいと感じました! 川根茶をまだご存じない方も多いとのことですが。
全国的にみると、川根茶は流通する量自体が少ないですからね。
特に若い方に向けて発信していかなければということで、
手軽に飲める「川根茶ペットボトル」を2022年に発売しました。
他のペットボトル茶との差別化を考えたとき、通常は二番茶、秋冬番茶を使うところを、
うちは一番茶で勝負しようと。1本200円と少々割高かと思いつつ、
飲んでいただいた方からは「もっと高くてもいいんじゃないか」とのお声をいただけて…。
―実際に飲まれた方が、一番茶の美味しさや価値を実感されているということですね!
嬉しいですね。川根地域や隣の市町での限定販売で、現在2万本以上出荷。
今後は県内外の方にも飲んでいただけるようPRして、
ゆくゆくはお茶の葉からお茶を入れていただけるようになれば…と思います。
―日本三大銘茶のひとつを生んだ川根エリア。魅力はなんでしょうか?
水や空気はもちろんですが、夜の星空がもう本当に綺麗なんです!
無数の星たちが光り輝く星空が、視界いっぱいに広がるのが一番の魅力。
ご覧になった方は驚かれます。自然環境が豊かで、エメラルドグリーンの水を
たたえる接岨湖や12カ所以上あるつり橋など、挙げればきりがないほど。
都会から来た方々にもとことん付き合うといった、
人情味にあふれた方々が多いのも魅力ではないでしょうか。
―ここ最近、都会から移り住む若い方が増えたとお聞きしました。
カフェやフランス料理店を開かれる方も多くて、町の雰囲気もずいぶん変わってきました。
こうして、移住される若い方々と一緒になって町を盛り上げていけているのが
とっても嬉しいんですよね!
同時にお茶が中心の町でもありますので、「美味しいお茶づくりにご興味のある方は、
お茶の木を育てるところから始めてみませんか?」と伝えたい。
バックアップする環境は揃っているので、お茶づくりに関心のある方はぜひ、お越しいただきたいですね。
TEXT/左藤緋美