「銀の山」のアロマが伝える、島田の豊かな風景とそこに住む人のあたたかさ
”島田の逸品”にも認定された「銀の山」のアロマスプレー。
主に島田市で採れる、廃棄予定の柑橘や木材などを原料にしたサステナブルな商品です。
その香りは、島田の豊かな風景にインスパイアされて生まれるのだとか。
島田への愛があふれる、代表の希代智子さんにお話を伺いました。
―「ほのぼの」「きよらか」「そよそよ」…。商品のネーミングがとても印象的です。
島田市に住む方々はとても親しみやすく、ほんわかしている人が多いなと感じて。
だから最初に香りを作るときに浮かんだのは、“ほのぼの”という言葉と、島田で採れる柑橘でした。
あたたかくて、移住者にも優しくて、世代を問わずそこに住む方々が安心してつながっていけるのが島田。
そんな皆さんが笑顔になってくれたら…という想いを込めて、
親しみやすいひらがな4文字のネーミングにすることを決めました。
―オリジナルの香りはどのようにして生まれるのでしょうか。
島田の景色からインスピレーションが湧きあがってきます。
一番大切にしているのは、風景を「色」で表現すること。
柑橘のオレンジ色、清らかな水のブルー…。素材から考えることももちろんありますが、
主にその景色を色で例えていくところから香りが生まれます。
島田の風景って、本当にきれいなんです!
長らく東京や都会での生活を送ってきましたが、あらためて地元島田に帰ったら…。
夕日が、空が、稲穂が風にそよいでいるのが、こんなにきれいだったっけ!って。
都会ではビルの隙間に見えていた夕日も、こちらでは山に沈みゆくところまで見送ることができる。
そんな美しい島田に来てほしい、島田を知ってほしい!という気持ちが私の根底にはあるんですよね。
―その想いが香りやネーミングに反映されているんですね。希代さんが最初にアロマと出会ったのはどんなタイミングだったんでしょう?
大学時代に街づくりやマーケティングについて学んだことから、地域デザインに携わる仕事をしていました。
それから夫の転勤で関西に移り住み、初めての子育てに奮闘する中で、
子どもと肌で触れ合うベビーマッサージをきっかけに、香りやアロマの存在を知りました。
ただ、自分が好きな香りでも子どもには向かなかったり、状態によって感じ方が違ったり。
そうした体験を経て、効能的なものも含めてアロマを学びたいと思ったのがその頃です。
―「銀の山」」では、商品だけでなく「アロマ空間デザイン」も提供されていますね。
10年ほど前からはアロマ空間デザインの仕事を始め、これまでに東京都内の商業施設やスポーツクラブ、
ホテルなどに、アロマで空間のコーディネーションする仕事をしてきました。
その仕事をしながらも、なぜか思い出すのは幼い頃に祖父と出かけた山のこと。
荒れ行く島田の山のことが、次第に脳裏から離れなくなっていって…。
それで、自らの手で「香りをつくる」側としての勉強を始め、約3年前に地元島田に戻り開業しました。
―地元の方のご協力もあって、島田の廃材などをアロマの原料にされていると聞きました。
ありがたいことに、農家や材木店といった多くの方々に廃棄予定の素材をご提供いただいています。
ただ、サステナブルやSDGsとは言うものの、山で採れた木や取り置いていただいた
ミカンを車で運べばガソリンも、加工する際には、ガスも電気も使っています。
本当の意味で環境に優しいとするには、まだまだ課題もたくさんあります。
でも、この地域の資源を生かしていきたい。
そこから、いい香りだねって言ってもらえるものが生まれていくのは、やはり一番の喜びなんです。
―完成した香りについて、周りの方々の反応は?
ご高齢の農家さんだと、「俺、香水は使わないな~」「どうやって使うの?」と、
ちょっと困っていらっしゃることも (笑)。
ただ、“島田の逸品”に認定していただいたことで、
ご年配の方にもアロマが少し身近になってきた気もしています。
先日、「うちは『ほのぼの』使ってるよ~」と
ご高齢の方に言っていただけたときには、もう本当に嬉しくて!
アロマって敷居が高いと思われがちですが、元気になったりリラックスできたりと、
もっと、日々の中にあるものであればと思っています。
―これからどんな香りが生まれていくのか、とても楽しみです。
柑橘の中でも「スルガエレガント」は、静岡を表現する香りとして活用していきたいと考えています。
そして、「銀の山」のアロマがその土地を知ってもらうきっかけになったり、
人と人、土地をつなぐ役割になったりして、最終的には島田や静岡の街づくりにも
生かすことができたら…って思います。
ライター:左藤緋美