【移住者インタビュー】シェアハウス経営の夢をパラレルワークで実現!

静岡初の学生専用シェアハウスとして、2015年にスタートした『コクーンベース』。現在は社会人の入居者も加わり、学生と社会人が交わるプラットフォームとしても機能しています。運営しているのは鈴木駿矢さん。東京からのUターン、そして住宅会社勤務とのパラレルワークということで、その働き方についてお話を聞いてみました。

将来像をイメージして移住

――コクーンベースの運営とサラリーマンとしての仕事。二足のわらじということですが、ずいぶんと忙しいのでは?

そうですね、サラリーマンとしては新築戸建て住宅の営業ですから、土日は基本出勤で水曜日がお休み。他に一日どこかで休む、という感じです。もともと「副業はどんどんやっていい」という会社なので、同僚や上司でも珍しくないですけどね。所属部署の専門性を活かして個人で不動産関係やデザイン関係の仕事をしている人もいます。給与に占める歩合給の割合が高いので、「給料が足りなければ自分で稼いでおいでよ」という社風ですね。

――なるほど。個人に裁量権のある素敵な会社ですね。もともとそちらの会社で働かれていたのでしょうか?

いえ、出身は静岡県裾野市で大学も静岡県立大学卒なんですが、卒業前から東京でインターンとして働いて、その会社にそのまま就職。インターン期間も含めて5年は県外で働いてから静岡に戻ってきました。

――それではUターン移住ですね。東京ではどんなお仕事を?

音楽フェスなどイベントの企画制作をやっている会社でした。働き方は夜遅いし朝は早い。イベントが集中する時期は40連勤したこともありましたね。平日はデスクワーク、土日はイベントの現場につきっきり。大きなイベントになると地方の現場に一週間詰めて、東京に戻ってきたら報告書の作成、次の週はまた別の現場に飛ぶ。ここだけ聞いたらすごくハードに感じられるかもですが、本当に“好きだからできる”仕事でしたね。

――ハードそうですが、やりがいもありそうですね。

そうなんです。この仕事は大好きでしたが、結婚して子どもができるとしたらこの生活は難しいなと思いました。僕は30歳までに結婚して子どもは二人ほしいと思っていたんですよ。決め手になったのは、日曜日に結婚式を挙げる予定で仕事の調整をしていると前日の土曜日にイベントの現場が入りそうになって…。「やっぱりいまのスタイルで続けるのは厳しい」と痛感しました。
あとは、東京の学校や幼稚園、保育園で子育てするのは無理だなと。園や学校の敷地はみんなフェンスで囲われていて、人工芝の上で遊んでいる。それと費用面ですよね。例えば、今の会社で扱っている一戸建てを東京で建てたら、予算は場所によっては6千万~1億を超えるでしょう。でも、静岡なら3~4千万。いったいこの差は何なんだろうと…。
前職を辞めようというときに、東京で声をかけてもらった会社もありました。給料も倍近く出すと。妻にも相談したんですけど、やっぱり年収はいくら上がっても東京でのこれからの生活はイメージできないという結論になりましたね。
でも、東京でやっていた仕事のヒリヒリするような独特なスリルは懐かしく思うことはありますけどね。

――どうしても東京じゃないとできない、という仕事はありますね。

ただ、やり方はあると思っています。音楽フェスを例にとると、フジロックは新潟県の苗場でやってますが、「新潟ローカルのイベント」という雰囲気はないじゃないですか。「すごく面白いことをやってる!」ということが、たまたま静岡で行われているっていう作り方にできればいいですね。

二足のわらじで叶えたいもの

――そして、静岡に戻ってきて、新築営業とシェアハウス経営の二足のわらじをはく状態に。

『コクーンベース』自体は、前職のときに副業としてスタートしていました。もともと学生時代からシェアハウスを作りたいと思っていたんですが、そもそも当時はシェアハウスという存在自体に知名度がなくて、大家さんからの理解は得られなかった。
学生時代よくゼミでミーティングをしていたんですが、大学の構内って夜は閉まっちゃうんですね。それに、実家暮らしの学生は終電がタイムリミット。ミーティングが佳境になったころに、「電車があるんで」って抜ける人が出ると、どうしても盛り上がらない。だから、時間を気にせずに集まれて、経済的にも安い場所が欲しかったんですよ。『コクーンベース』でも入居者が友だちを泊められるように一部屋空きを作っています。

――前職のときにスタート、ということはイベント運営で忙しい最中に静岡と東京を往復して物件探しとか……?

そうでしたね(笑)。正直、当時どういうスケジュールで動いていたのか記憶にないです。物件を決めて家電や家具を買い、入居者を募集し、諸先輩の方からの意見を聞きながらルールを作り、その一方で音楽フェスの仕事もやっていた。正直貯金も使い果たして毎日カップラーメン生活でした、スーパーで安売りのときに買いだめして。

――それは想像を絶する状態ですね……。そこまで身を削って立ち上げた『コクーンベース』、ここまでの道のりはいかがでしょうか?

収益的には2年は赤字、3年目でトントン、4年目でようやく黒字が出てきましたね。単純に経営的なことを考えると、普通にマンション経営やったほうがいいですよ(苦笑)。いろんなトラブルもあるし、性善説だけでやっていくのは難しい。学生向けってリスクが高いんですよね、みんな卒業したら出て行っちゃうし。学生だから、全員が社会的な常識を備えているわけでもない。

――学生時代からの夢だったシェアハウスですが、実際に運営してみてどうでしょうか。

もちろん大変なことはありますが、やってみてよかったことはたくさんあります。僕は、学生の間に多様な価値観に触れることはとても大事だと思っています。普通に大学に行っているだけでは、社会人と会う機会って少ないですよね。『コクーンベース』で大切にしているコンセプトの一つは、「学生と社会人が触れ合える場所」です。
僕の大学の卒論のテーマは、「就活鬱にならない大学生活の過ごし方」でした。専攻は組織マネジメントです。大学には、社会に出たときのシミュレーション機能はないじゃないですか。それなのに、就活では「社会」と「会社」の両方に適応する、二つの社会化をいきなり求められる。就活鬱や就活後の鬱を防ぐために、バリバリやってる社会人、ダメな社会人、両方に会っておいた方がいい。社会人は立派な人ばかりじゃないってことがわかっていれば、就活で必要以上に傷つく必要がなくなるでしょう。
コクーンベースは「挑戦したい若者が、挑戦できる基地」でありたいと思っています。例えば今の入居者には劇団で演劇をやって俳優を目指したい、という子がいますが、親の立場なら「頑張れ」とばかりは言えません。でも僕たちなら、迷わずに背中を押すことができる。その姿をみて、他の子も「自分にも何かできるかも」と思うかもしれない。

――自分の夢実現と学生を応援する姿勢、素敵です。今後はどんなことを目指して行きたいですか。

シェアハウスは大変だって話をしておいてなんですが、もう一軒やってみたいですね。次は一戸建ての持ち家で。せっかくリフォーム事業もある会社に勤めているので、DIYでリノベもしてみたい。それとイベント開催ですね。11月に会社共催という形でイベント「FUN FAN DAYS 2019」をやりましたが、次は個人でやってみたい。子育ても頑張りたいですし……やっぱり二足以上の草鞋を履いていく人生ですね。

会社の制度はあれど、鈴木さんのお話をうかがっていると好きなこと、叶えたいことに対してさまざまな視点やアプローチをお持ちだなと感じました。何か新しいことをはじめるにはリスクも伴ってくるものもありますが、そのできる範囲の中でいかに取り組み楽しむか“新しい働き方”の鍵になるものがみえたように思います。
(文=深水央、写真=窪田司)